映画、ドラマ、舞台まで幅広く活躍した女優山本陽子（やまもと・ようこ）さんが20日に急性心不全で亡くなったことを22日、所属事務所が発表した。
81歳。亡くなる数時間前まで、親族である事務所関係者と一緒に過ごしていたという。
故人の遺志により、葬儀は親族だけで執り行い、後日お別れ会を開催する。
山本さんのおいで所属事務所代表の日塔謙太郎氏が公表した書面によると、山本さんとは亡くなる数時間前まで一緒にいたという。帰宅直後の急性心不全で亡くなったとし、「いまだに信じられません」と言うほど急な出来事だった。
4月の舞台「そして誰もいなくなった」の稽古を控え、台本と向き合う日々だったという。日塔氏は「今ごろ向こうで『こっちの話し方のほうがいいかしら？』などと役作りに励んでいることと思います。最期の瞬間まで自由に生きた幸せな人生でした」とした。
今月2日には、テレビ朝日系「徹子の部屋」（月～金曜午後1時）に、ともに日活で活躍した高橋英樹と出演したばかりだった。70歳で静岡・熱海に移住したことや、健康の大切さ、「いろんな役に挑戦したい」など意欲を語っていた。
清楚（せいそ）な役から悪女役まで、振り幅広く演じた。りりしい表情や、はつらつとした声、着物姿が印象的で、意志の強い役柄がよく似合った。映画は「華麗なる一族」「八つ墓村」など、ドラマは「ハングマン」シリーズ、「黒革の手帖」など、舞台女優としても「おはん」「放浪記」「細雪」など代表作は数多い。67年に起用された老舗のり販売「山本海苔店」のイメージモデルは現在まで57年間務めた。「専属モデル契約年数世界最長」としてギネス記録に認定されたことも話題になった。
東京生まれで、高校卒業後、野村証券に入社。投資相談部で勤務していたところ、日活のプロデューサーの目にとまったという異色の経歴の持ち主。第7期日活ニューフェイスとして63年に芸能界入りした。私生活では、99年に亡くなった俳優沖田浩之さんとの年の差を超えたロマンスが注目された。車の運転が趣味で、日本人で初めてポルシェに乗った女性とも言われた。気品に満ち、かっこいい女優の代名詞のような人だった。